Butterfly Under Clouds.
masataka kondo
2015/08/01

1st CDアルバム「Butterfly.f」リリースによせて – たぶん、僕は喋りすぎている



「Butterfly.f」近藤真生
2015.09.16 Release(2,000yen+tax)
http://morphosis.jp/

 9月16日にリリースされるファーストCDアルバム「Butterfly.f」は片羽の蝶をモチーフとした同名タイトルの映像作品シリーズのサウンドトラックを収録したものだ。
 サウンドトラックという言葉からは映像がメインで音楽はそこに付随するものという印象を受けるかもしれない。だけど、このCDアルバムに関して言えばその解釈は当てはまらない。

 なぜなら「Butterfly.f」は映像のための曲、曲のための映像、この両方の性質を持ち合わせているからだ。どちらかが支配的な影響力を持つのではなく、並列的に合わさったときに1つの世界が浮かび上がる。そして、それは片羽の蝶が放つ”不完全であるからこそ宿る美しさ”へと繋がっている。
 築き上げたはずのバベルの塔は幻想でしかなかったことを知ったこの時代。僕らは立ち尽くすしかないような喪失さえも経験した。 でも、それは人々が無力であることを意味してはいない。不完全性は完全性の欠如ではなく、それ自体が固有の力を持った創造性であり、それはどんなに野蛮な力を持ってしても奪うことができないものだ。

 「Butterfly.f」という、この世界を記述するための言語を手に入れることができたのは僕にとって幸運なことだった。現在、それを表現するためのメディアは、映像、音楽のほかに、絵画、彫刻へと広がっている。
 その一方で、CDアルバムのリリースについては、なかなかそこに踏み込むことができずにいた。

 国内でリリースされるCDアルバムは年間約1万7千タイトルと言われる。
 その気になりさえすれば誰もがCDをリリースできるような時代でもある。
 それに僕は普段ライブ活動もしないので特定のオーディエンスもいない。
 そんな中、あえてCDをリリースする意味とはなんなのか?

 そう考えたとき、リリースへのトリガーとなるようなもう1つのきっかけが自分の中で必要だった。
 そして、僕にとって、そのトリガーとは、坂本龍一、その人以外には考えられなかった。

 僕が作曲を始めるよりもずっと前、ライブで初めて聴いた坂本さんの音楽からはそれまで聴いてきたどんな音楽にもない衝撃を受けた。それは後の僕の音楽的嗜好に決定的な影響を与える出来事だった。
 だから、坂本さんがパーソナリティを務めるラジオ番組「J-Wave Radio Sakamoto」のオーディションコーナーの存在を知ったとき、そこで楽曲がオンエアされることが僕の中で特別な意味を持つ試金石になった。

 坂本さんへ送った数曲のうち「L2」という曲がオンエアされた。
 この曲はネットレーベルArtLism.JPのコンピレーションのためにつくった曲だった。ジャケット写真をイメージした曲をつくる企画で、そのジャケットには夜の闇に遠く街の光が美しい線を描き出している写真が使われていた。「L2」の曲名は”Light”と”Line”の頭文字を合わせたものだ。

 そして、この「L2」は今回のCDアルバム購入特典として(※タワーレコードオンライン限定)、ゲストアーティストにInward as DJ Pizzを迎えたリミックスと共にボーナスディスクへ収録している。
 Inward as DJ PizzはArtLism.JPで知り合ったトラックメーカーだ。サンプラーを駆使してつくられるその有機的で強靭なビートは野性的なダンサーが持つ鍛え上げられたしなやかなボディを思わせる。オフビートな僕の曲に彼のトラックが乗れば別次元の魅力を放つ確信が僕にはあった。そして、それは予想を上回る強度で的中している。

 また今回のアルバムとボーナスディスクのマスタリングを福山Cableの出原さんへ依頼した。僕の抽象的なオーダーを魔法のように具現化してくださった。

 たぶん、僕は今喋りすぎている。
 無名の音楽家が1枚のCDアルバムをリリースする。ただ、それだけのことだ。
 それでも、やはり言っておきたい。
 そのすべては小さな奇跡の積み重ねなのだと。

 このCDアルバムを必要としてくれる人の元へ届くよう祈りをこめて。
 関わってくださったすべての人への感謝と共に。

ボーナスディスクジャケット